国家資格が必要な事務系職種(主な士業)

公認会計士、税理士、司法書士、社労士の独立開業はいまなお魅力的

「士業のチャンピオン」である弁護士ですら冬の時代に突入しました。独立開業してもまともな訴訟業務は獲得できず、小さく稼げる過払い金返還請求でも大手法律事務所にごっそり持っていかれてしまいます。

弁護士でもこの状態ですから、業務単価が弁護士より低額になってしまう、公認会計士、税理士、司法書士、社労士たちは、なおさら独立開業が難しくなっています。
せっかく苦労して取得した資格ですが、企業の社員として専門業務に従事したほうが無難なのでしょうか。

必ずしもそうとはいえないでしょう。
独立開業した公認会計士、税理士、司法書士、社労士たちの中には、充実したビジネスライフを送っている人たちもいます。通常の会計業務、税務、法務、労務に付加価値をのせることで、顧客や地域から信頼され愛される頼りにされる存在になることができます。
この域に達すると心から「独立開業してよかった」と思えるでしょう。
士業の方たちが独立開業で得られるやりがいと達成感は格別です。

公認会計士、税理士の独立開業の大変さ

4つの士業のうち、まずは公認会計士と税理士の現状についてみていきましょう。

企業やビジネスの「お金まわり」を仕事にする公認会計士と税理士は、日本経済が好調なときは忙しくなりますが、経済が傾くと途端に苦境に立たされます。
さまざまな経済指標は2017年ごろからバブル期以来の好調な数字を出しています。政府や日銀はしきりに「日本経済は回復した」と強調します。
しかし、為替が少し円高にふれただけで途端に株価が下がるなど、不安定な状況が続いています。生の経済を見ている公認会計士や税理士には、「経済回復」の実感はないのではないでしょうか。

公認会計士を襲う逆風

公認会計士については、東芝問題やオリンパス問題などで、監査への風当たりが強くなっています。さらに企業は経費削減のために、公認会計士事務所に支払う顧問料を減らしています。それで公認会計士事務所で働く公認会計士たちの給料も下がります。
このような状態で「独立開業しよう」とは思えないでしょう。

中小企業が上向かないと税理士の苦難も続く

税理士はさらに厳しい状況にいます。公認会計士が関わる大企業はそれでも賃上げなどが進んでいますが、税理士の顧客である中小企業は苦境が続いています。
国内に400万社あるという中小企業の7割は赤字で、40万社が金融機関への借り入れ返済に苦労しているという報道もあります。
経営が悪ければ利益が出ず、税金も安く済むので、中小企業の社長は税理士に節税対策の相談をする必要がありません。つまり税理士は税務相談という仕事を失うわけです。

有能な会計ソフトがライバル

さらに最近は、有能なクラウド型の会計ソフトが続々出ています。しかもクラウド型会計ソフトの使用料は年間数万円程度です。税理士事務所はその金額では、企業の会計補助業務を引き受けることはできないでしょう。
税理士事務所の仕事はますます減っていきます。

司法書士、社労士の独立開業の大変さ

次に司法書士と社労士の現状をみていきます。
司法書士と社労士は、企業活動全般をサポートしていますが、こちらも厳しい状況は一緒です。

司法書士業務で上向いているジャンルはない?

司法書士の仕事の内訳は、80%が財産管理処分や不動産売買に伴う不動産登記で、残りは商業登記、企業法務、裁判事務、成年後見となっています。

国内の不動産価格は若干上昇傾向が見られますが、それでも日経平均株価ほどには上向いていません。これはバブル時代の土地の暴騰と暴落のトラウマがまだ残っているからでしょう。企業も一般消費者も不動産投資に慎重です。ということは不動産売買も低調ということで、司法書士の稼ぎどころの不動産登記も少なくなっています。
また、超高齢社会に突入し認知症高齢者の増加から成年後見の仕事は増えていますが、これは業務単価がとても安く、大きなビジネスモデルを形成しづらい欠点があります。

弁護士が「領空侵犯」

さらに弁護士数の増加も、司法書士の業務を圧迫しています。弁護士事務所が格安で任意整理や過払い金返還請求に携わるようになると、どうしても司法書士の分は悪くなります。消費者は「司法書士も弁護士も着手金無料なら、弁護士に頼もう」となってしまいます。
仕事が減っている弁護士は背に腹を変えられないので司法書士の領域を「領空侵犯」するしかないのです。

IT化とネット化が社労士の仕事を奪う

社労士は給料計算や社会保険制度の手続き、助成金申請などで企業を支援していますが、こちらも企業からの顧問料の減額攻勢にさらされています。
また、最近は行政機関のIT化とネット化が進み、各種手続きがオンラインで簡単に行えるようになりました。そうなると企業も、これまで社労士事務所に依頼していた業務を自社内に取り込もうとします。
業務代行しかしていない社労士事務所は今後ますます苦境に立たされるでしょう。

それでも開業した士業たちが満足している理由

さて、散々、公認会計士、税理士、司法書士、社労士の独立開業が、いかに前途多難であるかを紹介してきました。
しかしこの厳しい事実を目の当たりにしても、なお「独立開業したい」と強く思っている若い士業の方は、あきらめる必要はありません。

この状況下でも高い収益を上げている士業事務所はありますし、「大変さ」は覚悟の上で独立開業する若い士業たちもいます。
彼らは、独立開業を成功に導く方程式を見つけたのです。

アドバンテージを有効活用しないのはもったいない

冷静に考えてみれば、士業たちは「高級資格」の保有者なので、それだけで他の業種で独立開業する人たちより有利なはずです。
「高級資格」を持たず独立開業している人たちは、「資格があればもっと稼げるのに」と思っています。
士業たちがそのアドバンテージを使って独立開業しないのはもったいない話なのです。

「+アルファ」で付加価値を高める

士業の独立開業で成功するには次の2つの方法があります。
Aタイプ:従来の業務をコツコツ磨き上げて地域の中小企業の信頼を勝ち取る
Bタイプ:従来業務に「+アルファ」して付加価値を高める

Aタイプはすでに独立開業している老舗事務所が取り組んでいるので、これから新規に独立開業しようとする士業たちはこちらを選択しないほうがいいでしょう。
しかも今後、人工知能(AI)を搭載したソフトウェアが登場すれば、士業の従来業務はコンピュータに次々置き換わっていくでしょう。

よって若い士業たちが狙う独立開業はBタイプです。「公認会計士+アルファ」「税理士+アルファ」「司法書士+アルファ」「社労士+アルファ」を目指しましょう。
「+アルファ」することで士業事務所に付加価値をのせるのです。

しかも多くの士業事務所は、独占業務でなんとかやりくりできているので、「+アルファ」や付加価値に興味を持たず、それどころか邪道とみています。
だからこそ、付加価値を高めた士業事務所は差別化できるのです。

付加価値には次の2つのポイントがあります。
・「事務処理を手伝って終わり」「相談にのって終わり」というビジネスをしない
・企業の経営に深く関わり企業の成長に「コミット」する
詳しくみていきましょう。

ベンチャー企業やスタートアップ企業を成長させる

公認会計士、税理士、司法書士、社労士の力を、喉から手が出るほど欲している企業があります。それはベンチャー企業やスタートアップ企業です。

これらの新興企業は、IT、IoT、AI、クラウド、EC(電子商取引)の各分野で秀でた技術を持ちながら、資金不足、人材不足、経理知識不足、財務知識不足、法務知識不足、労務知識不足、会社運営知識不足の「不足地獄」に陥っています。
いずれも士業たちがフォローできる分野です。

困っているところにビジネスの種があります。ベンチャー企業やスタートアップ企業は明日、大化けするかもしれません。
ソフトバンクや楽天はいうまでもないでしょう。
ZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイは1998年創業で、株式時価総額約1兆円にまで急成長しました(2018年5月)。広告やゲーム、AbemaTVなどで有名な株式会社サイバーエージェントも1998年創業ですが、時価総額は約8,000億円です。

確かに士業事務所が新興企業を支援したところで、顧問料の額は高が知れているでしょう。しかし企業の成長を間近で見ることができます。そして支援した企業が株式上場したら、大きな果実を得られるだけでなく、企業支援のコンサルティング業務のスキルが身につきます。
これこそ「+アルファ」であり付加価値です。

ホワイト転換や働き方改革を支援できる

中小企業の中にはやむを得ずブラック企業になっているところもあります。社長がいくら「本当は社員を大切に扱いたい」と考えていても、資金繰りがうまくいかなかったり、短納期低価格の仕事を引き受けなければならなかったりすると、社員を追い込んで乗り越えるしかありません。
このような企業は、きっかけをつかむと「歯車」がスムーズに回転し始めることがあります。そうなれば業績が改善し、社員に優しい企業に生まれ変わることができます。
士業事務所はそのようなきっかけを中小企業に与えることができます。

「やむをえずブラック企業」をホワイト企業に転換させる仕事も、士業事務所の付加価値になります。というのは、政府や行政はいま「働き方改革」を強力に推し進めています。
ブラック企業をホワイト企業に転換させるノウハウを身につけた士業事務所は、行政にも経済系マスコミにも必ず注目されるでしょう。

例えば東京都には「働き方改革助成金」という制度があります。これは働き方・休み方改善を図った企業に助成金を支給する制度です。
それ以外にも政府系金融機関の融資制度があります。
士業事務所ならこのような助成金制度などを盛り込んだ「成長地図」をつくり、中小企業を支援していくことができます。

東京都の「働き方改革助成金」制度の詳細は以下のURLを参照してください。
http://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/documents/ApplicationGuidelines.pdf

まとめ~士業が独立開業すると日本経済が元気になる

ベンチャー企業が急成長すると陣頭指揮を執った社長ばかりがマスコミにクローズアップされますが、企業は社長の力だけで大きくなることはできません。その縁の下には士業事務所がいるはずです。
公認会計士、税理士、司法書士、社労士の独立開業では、書類づくりやデータ収集や役所手続きは極力IT化、AI化して手間をかけずに処理して、コンサル業に力を入れるとよいでしょう。士業は「企業と企業」や「行政と企業」をつなげる力を持っています。
士業が独立開業して「つなぐ」仕事に力を注ぐと、日本経済はさらに元気になるでしょう。

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