独立開業のメリットデメリット

独立開業のメリットもデメリットも「会社との関係」

あなたが独立開業するかどうかで悩むのは、「会社を辞めて大丈夫なのか」不安だからではないでしょうか。
その直感は正しいです。

なぜなら独立開業するメリットもデメリットも、会社と深く関わるからです。
日本のビジネス環境はかなり特殊で、企業が圧倒的有利で、独立開業した人は圧倒的不利なのです。

「日本企業の終身雇用は終わった」という人もいますが、実際は多くの企業で「終身雇用的な慣習」が残っています。日本の企業はまだまだ従業員を大切にする傾向があります。
独立開業すると、このような企業からの恩恵をすべて捨てることになります。それで多くのビジネスパーソンは「独立開業するなんて無謀」と思っているのです。

しかし、独立開業は「自分の才覚だけで食べていく」ことであり、ビジネスの究極の姿ともいえます。
そこで、「独立開業したい」という気持ちがぬぐえない人は、実際に独立開業を決断するかどうかは置いておき、メリットとデメリットをしっかり把握しておいたほうがいいでしょう。

会社から解放されるメリットは大きい

独立開業のメリットは、会社から解放されることです。会社は常に従業員を拘束し、仕事を命じます。拘束と命令の代わりに給料をもらうことができますが、その金額は、あなたの労働の価値よりはるかに低いものです。

独立開業して会社からの拘束と命令がなくなり、労働の価値と同額の収入が入るようになると何が起きるのでしょうか。
ビジネスが楽しくなります。

純粋にビジネスが楽しくなる

例えばバーの店長の場合、雇われ店長は会社員で、オーナー店長は独立開業です。
雇われ店長もオーナー店長も、おいしいカクテルをつくり、バーテンダーやフロア担当者を効率よく動かし、来店客に素敵な時間を提供することは同じです。
店長である以上、雇われだろうとオーナーだろうと、店の責任を1人で背負う必要があります。

しかし店舗運営になると、雇われ店長とオーナー店長ではまったく立場が違ってきます。
雇われ店長が務めているバーでは、それまでシックでクラシカルでヨーロピアンだった店が、いきなりポップでアメリカンな店に生まれ変わることがあります。
雇われ店長がその路線変更に反対しようと、店のオーナーが内装屋に発注すれば3日でバーの雰囲気は一変します。
このとき雇われ店長は「これが会社員の限界か」と落胆するでしょう。

しかしオーナー店長の場合、例え自分の店のジャジー(Jazzy)なコンセプトがすたれ、客足が遠のこうとも、それを貫くことができます。そして、儲からなくても「わかってくれる」客が来てくれれば、それで楽しい仕事ができます。
ジャズをコンセプトにした店づくりは、オーナー店長のこだわりであり哲学です。独立開業すると、自分の考えとビジネスを完全に一致させることができるのです。

独立開業すると、純粋にビジネスが楽しくなります。

独立開業の魅力がわかる映画「シェフ」

余談ですが、この「独立するとビジネスが楽しくなる」ことがよくわかる映画があります。
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」というハリウッド映画です。
主人公は一流レストランの優秀なシェフでしたが、レストランのオーナーとケンカして辞めてしまいます。そして始めたのが、調理器具がついたトラックでサンドイッチを売るフードトラックです。一流レストランとフードトラックでは「格」が違うのですが、主人公はむしろ生き生きとサンドイッチをつくって売ります。これこそ「独立開業効果」といえるでしょう。監督、脚本、主演のジョン・ファヴロー氏は「アイアンマン」の監督ですので、映画としてのクオリティもかなり高いといえるでしょう。
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の公式ホームページはこちらです。
http://chef-movie.jp/

「会社のため」が「自分のために」に変わる快感

さて、話を戻しましょう。
会社員は誰のために働くのでしょうか。当然自分のため、家族のために働きます。しかし会社員は、働く目的の100%を自分や家族に振り向けることはできないはずです。

例えば35歳の会社員であれば、上司と部下がいるはずです。ということは、35歳の会社員は上司の面目を保つためにもパフォーマンスを落とすわけにはいきません。また部下を指導することも仕事の1つです。

もちろん会社側は「上司のため、部下のために働くことも給料のうち」と説明するでしょう。
しかしそれは本当でしょうか。
その35歳会社員が、手柄を横取りする上司や一向にやる気を見せない部下に翻弄されて苦労していることを、会社側はどれくらい把握しているでしょうか。
上司や部下に恵まれず十分力を発揮できない会社員は、「迷惑を受けている手当」をもらってもいいはずですが、そのような特別給与を支給している会社はありません。

ということは、会社員は働く目的の何パーセントかを会社に捧げなければならないのです。
しかし独立開業した人は違います。彼らは自分と家族のため「だけに」働いているのです。独立開業した人には、パワハラ上司も無能な部下もいません。

独立開業した人の中には、会社員時代より労働時間が長くなっている人もいます。しかしそれが平気な人は少なくありません。なぜなら、労働時間のすべてが自分と家族のためになっているので、ストレスを感じないからです。

自分の会社をつくる足掛かりになる

独立開業する人の多くは、自己実現のために会社を飛び出したのでしょう。
ではビジネスパーソンの自己実現とはなんでしょうか。それはビジネスで社会をよくして、ビジネスパーソンとしての足跡を残すことです。

これは何かと似ていますよね。そうです、会社を起業することと同じなのです。
独立開業して仕事が軌道に乗れば、それは自分が考案したビジネスが社会に受け入れられたことを意味します。
だとしたら、会社をつくりそのビジネスを大きくして、社会をよりよくしましょう。
独立開業は、自分の会社をつくる足掛かりになります。

会社の保護を失うデメリットも大きい

さて、会社の「悪口」をたくさん紹介しましたが、会社にはよい面もたくさんあります。
もしかしたら多くの日本人にとっては、会社から受ける悪影響より、会社からもらえる恩恵のほうがはるかに大きいかもしれません。

なぜなら日本の行政制度や法体制は、「会社ありき」で成り立っているからです。会社に勤めていたほうが「得」をする社会構造になっているのです。
つまり、会社を辞めて独立開業すると「損」をするというわけです。

年金も医療保険も税金の支払いもすべて自分でやらなければならない

会社に勤めることの「得」はたくさんありますが、例えば健康保険と厚生年金保険と介護保険の保険料の半額を会社が負担してくれる制度もその1つです。
これはとてもすごい制度なのです。

例えばあなたが生命保険会社のがん保険に加入したとします。このとき、月々の保険料は誰が支払うでしょうか。もちろん自分自身です。なぜなら、がん保険の恩恵を受けるは、あなただからです。

しかし健康保険と厚生年金保険と介護保険は、労働者が恩恵を受ける保険なのに、毎月支払う保険料の半分を会社が負担してくれるのです。
しかも会社は「優しさ」でそうしてくれているわけではなく、法律で「半額支払いなさい」と命令されているのです。

また源泉徴収制度も、会社員にとって大きなメリットです。「税金が勝手に給料から差し引かれている」と不満に感じている人がいるかもしれませんが、それは誤解です。
会社員にとって、源泉徴収制度のメリットは次のとおりです。
・会社が税金の額を計算してくれる(会社員が自分で収入と経費を計算しなくてよい)
・税金を確実に支払うことができる(過少に納税することも過剰に納税することも回避できる)

支払うべき税金の額を計算することは、とても難しく専門の知識が必要です。そこで法律で、「会社員の税金の計算は会社が行い、納税も会社が代行しなさい」と決めてあるのです。
一方、「独立開業した人の税金を誰かが面倒みてあげなさい」という法律はありません。

会社を辞め、独立開業した途端に、これらのメリットを受けることができなくなります。国民健康保険と国民年金と介護保険の保険料は、全額本人負担です。また税金の計算も、税金の支払いも、確定申告という制度を使って自分で行わなければなりません。

仕事を探す心配ほど大きなストレスはない

会社員でいるうちは、必ず仕事をもらえます。仕事を探す必要はありません。
しかし独立開業した人は、すべての仕事を自分で獲得しなければなりません。もし仕事がみつからなかったら、収入はゼロ円です。

独立開業した直後は、ほとんどの人が会社を辞めたことを後悔するでしょう。それは「明日、仕事はあるのだろうか」というストレスに耐えられなくなるからです。

大きな仕事にはもう携わることができないかも

独立開業するデメリットのなかでも、大きな仕事に携われなくなることは、かなり大きな損失ではないでしょうか。

例えば美容師の場合、大手のサロンに勤めていれば、モデルや芸能人のカットを担当できるかもしれません。しかし美容師が独立開業した場合、よほどのカリスマでもなければ、地味な小さな店舗からスタートしなければなりません。

広告代理店に勤めていた人がフリーランスになっても同じです。テレビCMや巨大イベントに関わることはできず、スーパーマーケットのチラシづくりや小さなイベントのポスターづくりをしなければならないかもしれません。

ビジネス規模が小さくなると、仕事へのモチベーションが落ちてしまうかもしれません。

信用を失う

会社員には「A社のaさん」という肩書きがあります。aさんは無名でも、A社は世間に知られています。一流会社に入っていれば能力がそれほど高くない人でも「すごい人」と言われます。これが、会社員であることの社会的信用です。

しかし独立開業した人は「aさん」でしかありません。つまりaさんが無名のままだと、世間から「何者かわからない人」と認知されてしまうのです。

「独立開業した人」と「不定期のアルバイトで食いつないでいるフリーター」と「無職の人」は、呼び名が違うだけで本質的には何も変わりありません。
無職の人が「自分は独立開業しているフリーランスです」と言っても、まったく問題ありません。

独立開業した以上は、仕事で実績を上げることでしか、「何者かわからない人」から脱出する方法はないのです。

まとめ~独立開業する人は独立開業する「要素」を持っている人

独立開業を決断する方法は、主に2つあります。1つ目は、メリットとデメリットを比べてメリットが多いと判断できたとき、独立開業する方法です。
2つ目は、独立開業すべきだと感じて独立開業する方法です。
実際に独立開業した人は、後者のほうが多い印象があります。すなわち、独立開業する人とは、元々独立開業する「要素」を持っている人なのです。

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